大衆酒場ゑびす(株式会社今野商事)地場の素材を活かして地方都市全体を盛り上げながらつないでいきたい和食文化 | 生き方で出会う三重の仕事 なりわい

大衆酒場ゑびす(株式会社今野商事)

地場の素材を活かして
地方都市全体を盛り上げながら
つないでいきたい和食文化

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日本各地に点在する地方都市。それぞれに、それぞれの人々が集い、独自の人間文化を育んできた。三重県四日市の歓楽街の一角にも、地元に根付いた食文化を広めようと、奮闘する人達がいる。

 

三重県最大、四日市の歓楽街。地元では有名な諏訪公園から徒歩1分かからない。角の看板を目印に細い路地を入ってすぐの場所。

昔懐かしい情緒漂うお店、大衆酒場ゑびすはここにある。

三重県四日市市諏訪栄町8-13

今回の取材は、株式会社今野商事が展開する3店舗共通、料理はもちろん、店舗運営全般から、付随する事業全般に関わることのできる新規メンバーの募集です。

 

真冬の2月上旬。

 

明け方の5:30。

 

厚手のジャンパーに肩をすぼめて、代表の今野(こんの)さん ※通称“大将” の一日は、人けのない歓楽街の朝から始まる。

さっそくトラックに乗り込んで、向かうのは地元の食生活の台所、北勢地方卸売市場。

初対面の車内。気難しい料理人という、こちらの勝手なイメージを覆す、明るい声のトーンと、気さくな受け答え。表情豊かで自然な笑顔が印象的。

そんな大将の生まれは、素材の宝庫北海道。大阪の料理学校で、以前から興味のあった和食を勉強し、卒業後、「料理なら京都だろう!」と、和食の本場でキャリアをスタートさせた。その後、奈良、淡路島での下積み時代を経て四日市にたどり着く。その後12年程、会社勤めで和食に携わっていたが、組織の拡大に伴い、大好きな料理の現場から、管理者側に移行していった。

 

「俺は料理人だ。料理がしたい。」

 

そんな風に思いながら独立計画が始まる。

当時の四日市には、安く、おいしく、お魚を食べられる店がなかったという。ならば、サラリーマンでも行けるお魚の店を出そうと、今の本店、ゑびすを立ち上げて8年目を迎えている。

 

なぜ四日市だったのですか?

 

コンビナートが有名で、工業地域のイメージが強い四日市とこの周辺。でも実は、三重県北勢エリアというのは、知れば知るほど食材の宝庫なのだとか。

伊勢志摩をはじめ、豊富な海産物が手に入る。松阪には日本有数の和牛ブランドがあり、鈴鹿エリアの気候が、上質な野菜作りに適している(山からの風が虫を飛ばし、農薬に依存しない栽培ができるらしい)。それらの素材が集まるのは、当然、人口の多いここ四日市ということになる。

 

素材が命の和食。

 

イメージに反して良い素材が集まる四日市。

なのに和食文化が浸透していない四日市。

 

「ならば俺がやる!」

熱い思いを伺いながら市場に到着。すっかり顔なじみの気の良い市場の男たちが、大将に声をかけてくる。

冗談交じりの世間話を通して、界隈の情報交換を重ねながら、それでもキッチリ品定め。素人では気づかないうちに商談が成立していく。まさにプロの仕事。

市場では、競り(せり)の前から値段が付けられていて、事前購入も可能。競りを待つことで、高くも安くもなりえるシステム。その日ごとに目玉商品は入れ替わる。種類ごとに値段も様々。経験と勘がものを言う。

そんな難しい仕入れの仕事を、余裕の表情でこなしていく大将。あらゆる雑談の中に、飲食業にとどまらない、ゑびすのビジョンが見えてくる。

独立から8年が経過した今、3店舗を展開し、既に一定のファン層を獲得しているゑびす。「これまではお店の運営で必死だった。」と大将は振り返る。そしてここ最近、ようやく見えてきた大きなビジョンがあると言う。

 

「和食は絶滅危惧種なんです。」

 

人はどうか?

若い人たちが和食をやりたがらない傾向にあるらしい。幅広い料理の道でも、圧倒的人気はパティシエだという。和食の料理人を志す人が少ない現状がある。

 

素材は?

海では天然の魚が減っているらしい。さらには船に乗る漁師の数も減っている。

どの業界でも聞く、技術、文化継承、次世代育成問題だ。

 

「大好きな和食文化を守っていきたいんです。」

 

大将の思いは、この一点に集約されている。そのためにできることを全部やろうと。

 

そもそも、食文化とはなんだろう?

日本に点在する地域社会。その土地土地では、それぞれ固有の食文化がある。

大将が教えてくれた、いくつかのこぼれ話。

 

例えばそれは九州の醤油。

九州地方の醤油は甘いらしい。それは現地の自然環境が影響している。周りを海に囲まれていて、魚の鮮度が高すぎる九州エリア。実は魚は、鮮度が高すぎると旨みが出ない。理想は2日間。運搬などの時間、わずかな熟成期間にアミノ酸が分解されて、素材自体の旨みを生む。その熟成期間を待たずに口に届く九州では、醤油を甘くして旨みを補うのだ。その土地に行ったら、極力、その土地の素材だけで食事をするのが、一番おいしい食べ方になるということ。

 

例えばそれは日本人の主食、お米の炊き方。

お米を一番おいしく炊くには、そのお米が育ったのと同じ水脈の水を使って炊くといいらしい。一粒一粒に内包される水分と、炊くための水分の性質を同じにするということ。そうすることで、最大限素材を活かした炊飯が可能となる。

大将が残したい和食文化とは、そういうことなのだろう。その土地土地で、そこに行かなければ味わうことのできない料理。それぞれの料理を創り上げている重要な要素は、その土地周辺で調達された食材ひとつひとつだ。最近良く耳にする”地産地消”。その言葉が意味する本質のひとつは、そういうところにもあるのかもしれない。

大将が地元の食材にこだわる理由もそこにある。和食文化を守るということは、料理を構成する食材、天然素材から調味料、水に至るまで、全てを周辺の地域で調達できる環境を守り、足りないものは創っていくということ。そのために取り組む全てのことは、大将率いるゑびすが取り組むビジネスになるのだ。

現在3店舗を展開するゑびす。ひとつは本店、大衆酒場ゑびす。そして昨年11月オープンした鮨ゑびす。こちらは本店と同区画、徒歩数十秒の場所にある。もうひとつ、立ち飲みスタイルのスタンドゑびすがある。3店舗共に、大きなコンセプトは変わらない。地元の素材を使ったおいしい和食を、できるだけ安く提供し、一般の方々に食べてもらうこと。人手が足りず、質を落とすくらいならやらないと、スタンドゑびすは現在閉めている状況。新メンバーを迎え入れて、一刻も早く再開したい。今回このタイミングでの募集にはそんな背景もある。

 

市場から戻り、魚が届くまでの隙間時間。少しの休息をとって、

 

9:30頃、

 

各店舗では仕込み作業が始まる。

事務作業をこなしながら笑顔で迎えてくれたのは、3年目の宮田さん。脱サラし、飲食店を始めようとしたが、経験が浅く、資金調達がうまくいかなかったという。そんな中、大将と出会い、ゑびすでの修業生活が始まった。事務から店舗の清掃、料理の勉強をしながらホールでの接客サービス。店舗運営の全ての工程に精力的に関わり、日々経験を積んでいる。目標は自分のお店を持つこと。そんなお話を笑顔でしてくれている間も、仕事の手は一切止めない。真面目で一所懸命な仕事っぷりは、見ているこちらにも活力を与えてくれる。

新しいメンバー募集、どんな方に来てほしいですか?

 

「夢を持った人!」

 

洗面台の窓を拭きながら、はっきり明瞭に答えてくれた。ガラス越しの笑顔にこれ以上の答えは必要ないなと感じさせられた。

厨房の端、コンロのあたりで昆布だしをとっていたのは、この道20年のベテラン北島さん。口数は決して多くはないが、面白い話が耳に入ると、声に出して笑う。質問には丁寧に答えてくれる。

同じ質問をしてみる。

どんな方に来てほしいですか?

 

「やる気のある方!」

「この仕事が好きになれる方!」

 

どんな仕事でも同じで、長く勤めるためには、やはり好きになれないと無理だろう。中でも勤務時間が長くなりがちな飲食業界。目標や夢があり、そこにつながる毎日の仕事が楽しい。これらが揃ってはじめて良い仕事ができる。たんたんと、落ちついた口調で語るベテランの言葉には、説得力がある。

厨房の真ん中、まな板エリア。魚を切り分けていたのは大将の今野さん。慣れた包丁さばきで丁寧に仕事を進めて行く。

同じ質問をしてみる。

どんな方に来てほしいですか?

「不器用でもいい。これだけは負けないっていうものがひとつ持てたらいいんじゃないかなあ。それがゑびすのビジネスの中で見つけられそうな方が来てくれたらうれしい。」

なるほど、やはりゑびすのビジョンは単純に飲食店の経営にとどまるものではない。店舗のある四日市を中心とした地域社会の中で、生産から流通、消費に至るまでの、一貫した流れ全体を構築していくこと。店舗という消費生活の出口をしっかり押さえ、今後もより良いものにしていくと同時に、志を共にできる、社内外の多くのパートナーとの連携によって、この界隈の和食文化そのものを守り、次世代につないでいくこと。そこに焦点は合っている。

市場での立ち話の中でも、仕込み中の店内でも、新しい食材や、流通に関わる話題が絶えない。

 

例えばそれは、日本人が好んで食べるフグの養殖。

養殖技術が進み、場所を選ぶことなく養殖が可能になってきた技術的背景があるため、鈴鹿山麓からのおいしい水に恵まれたこの地域でも、応用が可能かもしれない。遠くの海から天然ものを運んでくるよりも、地域内の水脈で育てたフグの方が、その土地で食べるには適している可能性もある。これが実現すれば、天然魚や漁師のなり手が不足している状況にも対応できる。

フグに限ったはなしではない。他の魚。農作物や畜産物。食事に欠かせない酒。全ての素材に言えること。

都会に住む人たちのライフスタイルや価値観。余暇の過ごし方もずいぶん変化してきた。高齢化などともあいまって、今後より見直されて行くかもしれない地方都市という存在。国内に点在するローカルを巡っては、その土地土地で、そこでしか出会えない食文化と触れ合う。

そんな新しい余暇スタイルが生まれつつあることを、大将は見逃さない。

四日市に来たなら、わざわざ食べにいくお店。

わざわざ食べにくる理由は?

 

それは、そこにしかない、地の食材を活かした料理を、地域の食文化ごと提供しているからだ。

「新メンバーも、お客さんも、そのビジョンに共感できる方に来ていただきたい。」

 

今回の募集。新メンバーには、そういう大きなビジョンを共有しながら、まずは店舗運営からキャリアをスタートしていただく。

まずは和食の基本、包丁に慣れていくこと。

そして店舗運営の全体を把握するために、ホールでのサービスを経験すること。これを経験しないと、今後、厨房からの指示も出せないということになる。

主にこれらを同時進行で進めていく。

技術的には、2~3年あれば取得できるという。

難しいのは感覚。

 

「今日の魚はいつもとどこか違うなあ。」

「いつもどおりの方法では、おいしくないかもしれないなあ。」

 

こういった感覚を身につけ、繊細な味の違いを感じ、コントロールできるようになるには、経験の積み重ねが必要になる。そして、成長には個人差があるという。これは努力を続けるしかない。

一方で、希望や興味に合わせて、市場への仕入れの同行や、新しい食材ルートの発掘など、自身の興味のある方面へキャリアアレンジすることができる。

アイデアの発信や意見交換は、経験年数に関わらず、随時可能な環境。

市場での立ち話や、仕込み中の店内では、事実、分け隔てない自由な意見交換が行なわれていた。そこに参加するかどうかは、本人次第なのだろう。

また、ゑびすでは、メンバーの独立を推奨している。これは大将である今野さんの、和食文化の存続と継承への思いが根底にある。自身の店を持って、志を共有できるパートナーとして、共に地域社会を盛り上げていける存在になって欲しいと、切に願っているのである。

きっと、今後も、大将の純粋で熱い和食への想いが、地域の食文化を支えて行く。その活動に仲間入りするには、今がまたとないチャンスなのではないだろうか。

少しでも魅力を感じるという方は、面接というよりは、まず大将と話をしてみるといいかもしれない。経験がなくとも、ここには書ききれていない、隠れた可能性が見えてくるかもしれない。

また、そんな可能性を引き出していけるような人間文化が、大将が率いるゑびすにはある。

 

募集要項

職種 接客・調理等 店舗運営スタッフ
資格 学歴・経験不問 調理師免許不要
時間 10:00~23:00(店舗により異なります)
休日 月6から7日
給与 月給 未経験者:230,000円以上 経験者:300,000円以上
待遇 各種社会保険完備、制服貸与、車通勤可(駐車場あり)、研修あり、他

 

会社情報

社名 株式会社今野商事
所在地 〒510-0086 四日市市諏訪栄町8-13(本店)
連絡先 059-324-5881

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