知っているようで、実はあまり知られていない。そんな世界かもしれない。
三重県北勢エリアの、食材流通を支える北勢地方卸売市場。青果部門唯一の卸売業者として、市場開設以来、生産者と小売業から地域住民の口に届くまでの需給バランサーの役割を担い、地域社会に貢献してきた会社がある。
四日市合同青果株式会社。
今回は、同社の中核部門の一つ、産地と消費者をつなぐ、販売部門スタッフを募集します。
市場内の青果卸売場。広大な面積のど真ん中から天井を見上げると、歴史を感じさせる大きな看板が掲げられている。雰囲気に馴染んだシンプルなデザインは、サイズ感のわりに悪目立ちしない。それはむしろ、風格を漂わせている。
時刻は午前7:30を過ぎたころ。場内には、種類ごとに分けられた野菜が並べられている。しばらくすると、各社のバイヤーが集まってきて、活気が出てくるらしい。
撮影準備を整え場内に戻ると、一般的に知られている市場のイメージそのものの、活気あふれる競り売りが既に始まっていた。
買い手には買い手のねらいがあり、
売り手には売り手の読みがある。
鋭いまなざしを一身に集めているのは、台の上に立つ競り人(せりにん)。同社の販売部門のベテラン、杉浦さん。
程よい緊張感が漂う中、独特のリズムで放たれる通りのいい声。抑揚をつけて、買い手のアクションを促しているのが、素人にも感覚的にわかる。言葉やジェスチャーには当然意味がある。それを理解し、場の空気に慣れてくれば、興味深い駆け引きが繰り広げられていることに気が付くに違いない。
種類ごとに、ブロックを移動しながら進められていく競り売り。合間合間には、笑顔と冗談が飛び交う。オンとオフの繰り返し。その2面性が面白い。
競り落とされた野菜は、管理部門の方々の協力作業によって、次々に出荷準備が整って行く。
商品を出荷先ごとのパレットに積み変え、フォークリフトで移動、ラッピング、といった流れ。
販売部門と管理部門。完全に分業されたチームプレー。見事なシステムが確立されている。
午前9:30ごろ。
あれだけ積み上げられていた商品は、ほぼ全て運び出され、気づけば人もまばら。午前の競り売りは、短時間勝負。
この時間帯から昼過ぎくらいまでの時間、同市場内にある事務所にて、伝票整理や翌日の段取りを行なう。その後夕方までは、各自自由に休憩をとり、夕方以降、各自自由に営業活動を行なう。独特の時間割と、与えられた裁量。自由な会社の方針が垣間見える。
「最初は少し戸惑うかもしれませんが、慣れてしまえば、プライベートな時間は多くとれるんですよ。それに加えて仕事のやり方も、自分に合った方法で自由にやってもらっています。」
こう話していただいたのは、佐川社長。
物腰の柔らかい、飾らないお人柄が印象的。社長に就任された今でも現場に立ち、社員とともに市場を支え続けている。
じっくりお話を伺う。
「販売は市場での競り売りだけではない。」
市場と聞いて誰もが思い浮かべるのは、活気のある競り売りの現場風景だろう。しかし、それは販売チャネルの一部にすぎない。他には、大手スーパーなどの量販店への直接販売や、食品加工会社への販売などもある。それに伴う商談なども、今回募集する販売スタッフの仕事。向き不向きはあるものの、本人の意思や適性に応じて、競り売り、商談と、幅広い販売スタイルの経験を積むことができる。
販売部門の仕事の面白みは?
その一つは、相場を自分が決めているという実感を味わえることだろう。
では、相場とは、何によって決定されるのだろうか?
それは一言では言い表せない。暦(こよみ)、気象、トレンドなどの、あらゆる条件を掛け合わせた結果導き出されるという。
例えば量販店の在庫状況について考えてみる。
市場が閉まっている休日明けなどのタイミングには、店舗の在庫は薄くなりがちだ。そうであれば、バイヤー達は沢山の食材を買いたがっているだろう、という予想が立つ。相場は上がりやすい状況と言える。
気象状況はどうか?
想定外の長雨が続いていれば、収穫量そのものが少なくなることは想像しやすい。そうなれば、少ない食材をたくさんのバイヤーが欲しがることになる。販売量は減り、相場は上がるだろう。
これらは、まだまだほんの一部。それら以外にも、長年の販売経験の積み重ねの中で、自然と備わってくる勘のようなものがあるという。それらを養っていくためには、日々好奇心を持って、仕事を楽しむことが大切なのだろう。
「でも、相場を決める卸売業にとって、相場は高ければいいというわけではないんですよ。」
現在、特に野菜に関して言えば、世の中に出回っている食材の7割以上が、市場を介して流通しているという。この数字は、市場が止まれば地域社会の食卓に食材が届かなくなることを意味している。また同時に、生産者の側から見れば、それと同じ割合の販路を失うことにもなる。
「地域社会の食材流通において、安心で安全なものを適正価格で販売していくことは、卸売業者の責任です。」
佐川社長の言葉からは、長年業界を支えてきた競り人の熱意と、揺るがない責任感が感じられる。
※同社では販売部門のスタッフのことを、一様に“競り人”と呼ぶ。
ここで新たに見えてきた、生産者側という立ち位置。
市場には、毎日日本全国から食材が集まってくる。それらの食材は、どのように集まってくるのだろうか。
同社では、この役割も販売部門が担っている。
先述の通り、野菜流通業でシェアの7割以上を維持している市場。さらには、三重県の地域特性上、ここ北勢エリアは人口も多く、消費の中心でもある拠点市場。販路は安定し、販売におけるライバルはほぼ存在しない。難しいのはむしろ、商材の獲得の方だろう。
日本全国に点在している生産地。
同じく全国に点在している各地域市場。
ライバルはここにいる。
外からは見えない食材の争奪戦が、日々繰り広げられている。
「生産者から任される人間性を磨いてほしい。」
数ある同業者に勝ち、食材を獲得するために、大切なことはなにか。それは、必ずしも高い価格で売ることだけとは限らない。会社の規模でもない。精魂込めて、手間暇かけて作られた食材。生産現場にいるのは人であり、収穫された実りの一つ一つには、関わった人達のドラマがある。
それを理解し、対価として適正な価格で流通させようとする姿勢を持つこと。そして、その気持ちが生産者の方々にしっかり伝わっていることだろう。
他業種の販売活動とりわけ営業活動と、同じことが言えそうだ。業界経験がない人でも、営業経験がある人であればイメージできることかもしれない。
昔から変わらない、営業の基本。
頻繁に現地に足を運び、自分の目で見て、自分の耳で話を聞く。対面頻度を上げることで、本音を引き出すのも有効な手段だろう。
各産地、品目ごとに、部会(ぶかい)と呼ばれる組織がある(経済コミュニティのようなもの)。そこで開かれている情報交換や、ミーティングの席に参加する。地域によっては、お酒の席もあるだろう。そこでしか聞けない話題や、そこに行かなければ得られない信頼、抱いてもらえない親近感があることは、デジタル化が進む現代でも、変わらず有効なアナログ戦法だろう。実際に農家の方々は、平均年齢が高く、有益な情報であっても、電子メールの開封率は見込めない。
ダイレクトコミュニケーション。
結局これが効果的。それをめんどくさいと思うのか、楽しむのか。それは本人次第なのだろう。
ご自身も販売部門でキャリアを積んできた佐川社長。名のある大手のバイヤー達を差し置いて、地元三重に質の高い食材を引っ張ってきた。そんな経験を持った社長自らが、社員に寄り添い、悩み相談にものってくれる。佐川社長だけではない。この仕事が好きで、経験豊富な先輩達が、リアルで的確なアドバイスをくれる環境がある。
「自身の特性を生かして、自分らしいコミュニケーションスタイルを確立していってほしいです。」
繰り返しになるが、やり方を決めるのは本人。
会社の方針は、フリースタイルだ。
ハイレベルな話かもしれないが、自分のスタイルが見つかってくれば、流通そのものに影響を与えたり、トレンドを自ら仕掛けていくような、ダイナミックな役割を担えるようになる可能性があるのも、この仕事の魅力の一つだろう。
例えば、消費者意識にアンテナを立てて、量販店などに新しい売り方を提案するような発想。
健康志向が広がっているのであれば、同じ食材であってもこれまでとは違った客層への販路拡大が可能かもしれない。
生産者側にとっては、販路が拡大し長期的な安定出荷が見込めれば、業務効率化に向けた設備投資なども可能になるだろう。少し飛躍するが、生産者の経済メリットが社会に認知されれば、若手離れなどの後継者問題などにも、巡り巡っていい影響を与えられるかもしれない。そういう風に、産地に貢献した実績を重ねていけば、売れると思われる新しい品目や品種、その生産を、産地にお願いするハードルも下がっていくだろう。信用と信頼を担保に、他社ではできない商品開発が可能になる。やはり、知れば知るほど、人間関係と、そこでのコミュニケーションが大切な仕事だ。
例えば地産地消ということ。
地域社会の量販店にとって、地元の食材を消費者に提供できることは、経済的メリットが大きい。同じ種類の野菜でも、選択肢があるのであれば、地元の食材に反応しやすい消費者心理は、想像に容易い。また、物流コストをはじめとするあらゆる工程における、スマートな社会システムの実現という観点では、地産地消の実現で得られる社会的メリットが高まる。組織としては、継続的に行政に働きかけをし、あらゆる方面から、地元の産地育成にも積極的に取り組んでいく。それを生かして、実際の現場をより良い方向へ底上げしていくのは、販売部門に所属する各スタッフの仕事だろう。
同社や市場が、地域社会の流通に欠かせない存在であることがわかる面白いエピソードがある。
現場は学校給食。
仮に、ミカンを200個準備しようとした時、単に数を集めるだけでは終わらない。給食を食べるのは子供達。サイズが違えば取り合いの喧嘩になってしまう。つまり、サイズが揃ったミカンを200個集める必要がある。
市場を介さない流通経路が存在しないわけではない。しかし、このような要求に応えられるのは、現状市場だけなのだ。
この話からわかるように、やはり販路は安定している。この状況は、今後も大きくは変わらないだろう。その安定と影響力があるからこそ、果たすべき責任、取り組める活動がある。
産地のドラマを知り、
マーケットを読み、
地域食材流通全体のバランスをとる仕事。
楽しめる方にとってやりがいは充分。安定志向の方でも安心して続けられる歴史と、確固たる立ち位置を持つ会社。
魅力的に感じる人は少なくないかもしれない。
最後に、現役のメンバーにもお話を伺う。
佐川社長の呼びかけで、ものの十数秒で席についてくださったのは、販売部門所属の小林さん。社長と社員の間でも、コミュニケーションは円滑だ。
この仕事どうですか?
「まあ、気楽やね!」
この第一声には正直少し驚いた。
でも、おもしろい。
気楽の意味は、社内に余分な気遣いや壁がないということ。高圧的な態度の先輩は一人もいない。仕事のやり方も押し付けられることはない。
佐川社長から伺っていた通りの環境があるようだ。
小林さんは、男児3人の父。仕事は楽しいし、この会社であれば、現実問題家族も養っていけると考えており、この仕事を続けていくことに迷いはない。
新しいメンバーへ、アドバイスはありますか?
「人とのコミュニケーションが嫌いだったらできないだろうね。それが嫌いじゃなければできると思いますよ。」
やはりこの仕事は、人とのコミュニケーションが大切な要素のようだ。
「なんの取材ですか?」
カウンター越しに声をかけていただいたのは、入社3年目で社内では若手のホープ、今井さん。
今井さんがかもしだす、ざっくばらんな雰囲気にこちらの質問も思わずざっくりになる。
どんな会社ですか?
「誰にも変に気を使う必要がなくて、いいですよ。」
気を使わない、気楽な雰囲気のある会社。それは誰に聞いても同じ意見。そういう文化なのだろう。
そうこうしているうちに、販売部のみなさんが勢ぞろい。若手からベテランまで。タイプはばらばら。でも無理のない自然な人間関係が見てとれる。
みなさん、せっかくなので、この雰囲気。
伝わる笑顔で一枚お願いします。
(小林さん/杉浦さん/今井さん/久能さん)
ご興味のある方は、ぜひ一度、会社訪問することをお勧めしたい。画面では伝わらない雰囲気が感じられるだけでなく、募集中の販売スタッフの仕事と同じく、現地に足を運ばなければ得られない情報がまだまだあるはずだから。
募集要項
職種 | 青果物の卸売販売(相対・せり売り) |
---|---|
資格 | 高卒以上、40歳まで、経験不問、要普通免許 |
時間 | 6:00~14:30 |
休日 | 日曜、祝日、その他特別指定日(月2回水曜) |
給与 | 月給220,000円~270,000円 |
待遇 | 各種社会保険完備、昇給年1回、賞与年2回、決算賞与、通勤費規程支給、財形、退職金制度有、有給休暇支給 |
会社情報
社名 | 四日市合同青果株式会社 |
---|---|
所在地 | 〒510-0874 四日市市河原田町伊倉712番地 |
連絡先 | 059-347-8313 |